それでもあきらめるな どん底人生

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相手を理解する技法

もうかれこれ数十年前
ある心理学の研修会に参加したことがある

どんなテーマで、何を学ぶために参加したかは
覚えていないが
そこで起こった衝撃的な出来事は
今だに、鮮明に記憶に刻まれていて
その後の私の人生に大きな影響を与えてくれた

研修会で起こったこと

テーマは『相手を理解する』だったと思う
進行役の方が
『みなさんの過去で許せない出来事、
許せない人を思い出してください』
と言われた。

『その人が、目の前に座ってる事を
イメージしてください。』

そういわれて、目を閉じて
やってみた。

すぐにそいつは現れた。
仕事上で、何度もぶつかり、
今だに、お互いに理解できない
あいつ。

司会者:『まずは、目の前の人にあなたが言いたい事を伝えましょう・・
遠慮なく、本心で伝えてください』

『はい、終わりましたか?』

『では、今度は、反対側の椅子に移って、
相手が着ぐるみを着てると
イメージして、

ジッパーを降ろし、
その中に入ってみてください。』

 

『さあ、準備はいいですか?』

『目の前には、あなたが座ってます。
そのあなたに向かって、
今度は、着ぐるみの本人が
喋る番です。』

『はい、どうぞ・・・』

なるほど、こうやって相手の気持ちを
理解するというわけか・・・

しばらくして、司会者の
『じゃーどなたか、壇上でやってもらますか?』
の問いに、ある一人の中年女性が手を挙げた。

司会者:相手は誰ですか?

女性:『娘です。15歳になります。
最近、気持ちが通じなくて・・・
私が何か言うと、いつも反発ばかりで・・・』

かなり悩んである様子

司会者:『では始めましょう
まずは、目の前の娘さんに言いたい事を
伝えて下さい。』

女性:『あなたは何故、いつも反発ばかりなの?
お母さんは、あなたの為を思って言ってるのに。
『もっとちゃんとしなさい・・・』そう言って彼女は黙った。

 

司会者:『よろしいですか?
それでは、反対側に移って着ぐるみに
入るイメージをもって座ってください。

今後は、娘さんがお母さんに喋る番です。』

『はい、どうぞ。』

長い沈黙のあと、
彼女は静かにぽつりぽつり喋りはじめた。

女性:『だって、お母さん、私が何か言おうとすると
いつも、遮るじゃない』

『私の言うことを聞いてくれないじゃない』

『私だって色々あるの。』

『私、本当は苦しかったの』
『怖くて、不安で仕方なかったの』
『それを、ただ、聞いてもらいたかったの』

『だって、こんな事言えるのお母さんしかいないんだもん』

 

その後、どれだけ沈黙が続いただろうか・・・
5分、いや8分・・・・

その間、聴衆はじっと黙って待っていた。

そして、突然彼女は号泣しはじめた。
多くの聴衆の前であるにも関わらず、
声を張り上げ、体をくねらせ、泣いた。

娘の気持ちに触れたそのことで、
娘への申し訳なさと、愛おしさと、

自分への憤りと、後悔と、悔しさと、
いろんな感情が入り混じったのだろうか。

彼女は心から泣いた。

周りの誰も、何も言えなかった。
ただ、そっと彼女を見守った。

同時に、誰もが自分に置き換えて
考えていた。

着ぐるみ挿入法

その日以来、
相手の着ぐるみ入ることが習慣になった。

会議の時、反対意見の同僚に入る

妻とけんかになりそうな時、ジッパーを上げてみる

車の運転でイラついた見ず知らずの相手の中に入る。

レストランで無愛想な店員に入ってみる。

すると、不思議な事が起こりだした。

あれだけイラついていた感情が、
まるで魔法にでもかかったかのように
すーっと落ち着いてくる。

『あいつにも色々ある・・』

そう思えたとき、
たった今までの自分とは違う自分がいることに
気が付く。

今まで、長い間、どれだけ自分本位で
考えていたか、行動していたか
を思い知らされる。

最後に

この研修を受けたからと言って、
いつでも相手の気持ちがわかるようになった
訳ではありません。

いまでも、感情に支配され、
イラついたり、責めたりすることはよくあります。

しかし、ふとした瞬間、
あの研修の女性のことを思い出し、
『そうだ、着ぐるみに入ってみよう・・・』

そう思える、機会が増えたのも事実です。