それでもあきらめるな どん底人生

これからの人生を最高にしていくために

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会社の売却を決意した日

もうじき長年いた会社を去ります。
何故なら、私は一度経営に失敗したからです。

長年経営してきた会社を業績不振から大手スポンサーに
買い取ってもらい、その結果、会社は救われ従業員は継続雇用になり、
取引先には一切の迷惑をかけずにすんだものの、

金融機関に借入を一部免除してもらったので、
連帯保証をしていた私は家や私財を提供して
了解をもらうこととなりました。

ある日、その時がやってきた

経営していた会社が長年業績不振で苦しんでいたある日、
社長室のドアが力なくノックされました。
それは想像通り、当社の財務担当役員のKさんでした。

Kさんは私より、年上の肝の据わった粘り強いビジネスマンです。

この苦境の中でも、何度励まされ助けられた事か。
そのKさんの口から『やっぱりだめした』という言葉が聞こえました。

駄目だったのは、ある銀行の融資の事です。
この場で融資を断られるという事は、見捨てられたという事になります。

想像はしていたものの、現実にその言葉を聞いた時、
背筋に冷たいものが流れ、口はカラカラになっていました。

『そうですか、わかりました。色々ご苦労様でした』
そう答えつつ、これからどうなるのだろう?
といった不安でいっぱいでした。

ここ数日、夜寝ていてもすぐに目が覚め、真冬だと言うのに
寝汗でパジャマをぐちゃぐちゃに濡らしていました。

寝付いたと思っても夢の中で必死に仕事をしていた事を覚えています。

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自力再建を諦める

『メイン銀行に行こうと思います。ついてきてください』
そうKさんに告げ、一緒に銀行に出かけました。
この時に決めたのは、会社を手放す事です。

長年家族のように、いや自分の人生と同じくらいの
会社を他人に手放す決意をした時には、
なんだか夢の中にいるような気分でした。
まさかそんな事が現実に起きるはずがない。

しかし、残念ながらそれはいつまでたっても覚めない現実でした。

銀行に着いて、その決意を伝えた時、驚かれると思ってましたが、
その反応は実に冷静でした。『そうですか、解りました』

それは決して冷たい一言ではなく、
『ようやく決断されましたか、正しい判断だと思いますよ』
そう言われているように聞こえました。

金融機関はお金のプロです。
今まで我社のような窮地に陥った会社は何度も見てきたはずです。
だからこそ、どうすべきかはすでに、
解っていたんだと思います。

それは、その判断を銀行から持ち出すのではなく、
企業経営者自らに行わせる為。

最後の覚悟は自分にさせる。
そういった武士の情けのようなものを感じました。

専門家による企業丸裸化

企業を売却するM&Aというのは、会社に適正な値段をつけて
買ってもらう事になります。

その為には、外部の専門家チームが
会社の価値を値踏みします。いわゆる丸裸にされるのです。

特に隠していた事はないものの、
ありとあらゆる資料を提出させられ、
細部にわたるまでしらみつぶしに聞かれていると、
これは警察の取り調べなのか?と錯覚しそうになります。

実は何度かその取り調べの最中に
『もういい、やっぱ会社売るのやめた、帰ってくれ』
そう言いそうになりました。

しかし、私の横で歯を食いしばって頑張ってる
Kさんの顔を見て、なんとか思いとどまる事が出来ました。

絶望的な結果を突き付けられる

数日の調査を終えて資料がまとまった後、
結果報告がなされました。

そしてその資料を見て唖然としました。

予想していた企業の価値が大幅に減らされていたのです。

こんなはずはない、『直近の決算書とは違うじゃないですか』

そう反論した事への返答は、本来あるべき資産、
例えば商品の在庫や設備がそれだけの価値が無い。
というものでした。

これだと、大バーゲンセールだ。
何よりも大切な会社が『これくらいの価値しかありませんよ』
そう断定された事に大きなショックを覚えました。

と同時に、計算がへたくそな私にもすぐに理解出来たのは、
『これでは売れたとしても銀行の借金を返しきれない
という事です。

『これは大変な事になるぞ』
どうしていいか解らない恐怖だけに
包まれていたのを覚えています。

ここまでは単なる序章だった

あれから2年半が経ちました。
裁判所での特別清算手続きも終わり、もうじき
全てが終わろうとしています。

そろそろこの会社を去る時期が来ています。

しかし、今思えば、あの資料を見た時には思いもよらない
数々の修羅場がそれ以後に待ちうけていました。

あの日は、まだ単なる序章であるとは
夢にも思っていなかったのです。

その後をこれから数回にわけて
お伝えしていきたいと思います。

よかったらお付き合いください。