それでもあきらめるな どん底人生

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『失敗の理由①』奢りが近視眼を生む

長年我が子のように、我が人生のように思っていた会社を
大手企業に買って頂きました。

従業員の雇用が守られ、仕入先には迷惑はかけなかったものの、
金融機関の負債を一部放棄頂く、事業譲渡という形で、
連帯保証をしていた私は私財を提供し、
一方で経営者保護のガイドラインを使わせて頂き、
まもなくこの会社を去ろうとしています。

www.k-genri.com

つまり私は事業を失敗させました。
今、この事実を冷静に振り返る時、
そこにはいくつかの『失敗の理由』が見えてきます。

そして、この理由を突き止め深掘りしていくと、
それらは失敗しない方法に繋がっていくことに気がつきました。

この事をお伝えする事で少しでも、
『失敗しない』為にお役に立てていただければ幸いです。

業績が過去最高

『今月も過去最高の業績です』
声を上ずらせて営業責任者であるKさんが報告してくれました。

当社はデフレによる価格競争が到来するであろうことを予見し、
いち早く中国での生産を開始していました。

事業をスタートした当時は問題だらけでした。
何度も中国に足を運び、打ち合わせを行うのですが、
いつも上手くいかずに、て交渉決裂。

そのまま感情あらわに席を立って、ホテルに帰ると、
しばらく経って先方の工場長がやってきて、
『さっきは少し感情的になってしまった。申し訳ない』と言ってきました。

『いや、こちらこそ失礼な事をいってしまった。許してほしい』と返事をする。
そんな真剣勝負を続けるうちに、
いつの間にかちゃんとした製品が出来るようになり、
心も通じ合うようになり、
パートナーというより家族のような関係になっていました。

若さも手伝って死ぬほどお酒をのんで語り合いました。

そんなチームが作る商品はお客様に喜ばれ
お陰で会社は大きな利益を出す事が出来ていました。

密かな奢りが生まれる

『こんなビジネス関係はそう簡単には作れないはずだ。
これは我社にしかない強みだ』

いつのまにか、そんな奢りが心のどこかに芽生えていたように思います。

『あの工場長に任せておけばもう間違いない』
そんな楽観が心の中に甘えを生んでいたように思います。

当時はまさか自分が奢っているなんて思ってもいません。
もちろん、大盤振る舞いをしたり、
無駄使いをしたりした訳ではありません。

そして、この奢りがもたらしたものは、
横柄な態度でも、自己過信でもなく、『近視眼』でした。

中国事業を始めた時は、社内でも様々な議論をし、
色んな人の意見に耳を傾けていました。

『これから日本の縫製業はどうなるだろう?』
『人件費はどう変化して、店頭価格はどうなって』
『東南アジアはどうだろう?』『リスクは?メリットは?』

考えられるあらゆることをむさぼるように聞いて
調べて事あるごとに現地に出向いてました。

その結果、中国事業は成功し大きな成果をもたらしてくれましたが、
いつのまにかその成功にあぐらをかいている事に気がつかずに
時間が過ぎて行っていたように思います。

あらゆる判断が、近視眼的になっていたように思います。

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環境変化の足音

世の中では、成功している事業や商品は常にチェックされています。

それらを虎視眈々と真似して自分の利益にしようと
広い視野で俯瞰している優秀な人材が山ほどいます。

それらの人はなにも競合他社だけにいるとは限りません。

我社の場合は、お客さまでした。
当社の商品を買って頂いている、
お客様が『だったら自分たちで作ろう』という方針に転換されました。

中国の激変

この頃になると、中国が急激な経済発展をしていました。
生産をスタートした当時、
工場に行って寮をのぞいたら地方から出てきた若い人たちが
2段ベットに身を寄せて生活していました。

日曜日に寮を除くとほとんどの人が部屋にいます。
『遊びに行かないの?』と聞いたら、
出来るだけ家族に仕送りしたいから出かけない。

そう答えが返ってきました。

それから数年後、中国は激変しました。
全ての工場は冷暖房完備、残業はなし、
若いスタッフの身なりはとてもお洒落で、
最新の携帯を持ち、恵まれた労働環境で働いています。

仕事は山ほどある。選び放題。その結果、
当時の中国は極端な人手不足に陥っていました。

そんな環境変化も日本に帰ってしまうと見えなくなってしまいます。
日常の業務に埋没しているうちに、
商品の原価は見る見るうちに上がって行きました。

『うちも厳しいが、他社も厳しいはずだ』
『お客様に、なんとか値上げをのんでもらおう』

しかし、その期待は淡く切り捨てられました。
この環境の変化を先読みして、
価格が上昇する事を前もって察知していた買い手であるお客様は、
密かに自社で製品を作る準備を進めていました。

それが我社(競合他社も)の値上げ交渉と同時に、
自社生産への切り替えが一気に進みました。

長年、このお客様を主力に取り組んでいた我社の売上は、
一気に減少して行きました。

それがそのまま直接、我社の経営に大きな打撃を与える事になります。

頑張ってはいけない頑張りがある

これまで、精一杯頑張ってきました。

どんなに駄目だしをされても、
なんとか買ってもらおうと企画も営業も一体となり、
頑張ってました。しかしこれはやってはいけない頑張りだったと
後になって気がつきました。

あの時、中国の環境変化をより的確に把握し、
お客様がどう考えているかに思いを巡らせ、
我社は今、何をすべきなのか。それをとことん議論して、
勇気を持って方針転換を決める。

これが出来なかったのは、私の経営判断のミスであり、失敗の理由です。

失敗は成功の道へつながる

環境変化のシグナルは、
過去からの数字の変化の中にちゃんと現れていました。
それはタイミングの、あるところで黄色信号をともし始めていたのです。

決して目立たず、しかし確実な点滅です。
いずれ大きな変化を予見させる静かなそれでいて重大な点滅です。

成功する為には、この黄色信号を見逃さない事です。
これは何も仕事だけの事じゃないかもしれません。

ある日突然、離婚を言い出した奥さんにも、
それよりも随分前に、『私の事をわかってほしい』
という信号が点滅していたのかもしれません。

急に体調を崩して入院してしまったとき、
数ヶ月前になんとなく異和感を覚えたあの時に
そのシグナルは点滅していたのかもしれません。

一生懸命は尊い事です。大切です。しかし同時に、
大切なサインを見落としてしまう、
近視眼に我々を陥れてしまう、恐ろしい力も持っている。

その事を知っておくべきです。

失敗がその事を教えてくれました。

まとめ

成功は過心と奢りを生む
上手くいっている時こそ全体を俯瞰してみる
黄色信号は過去の数字の中に目立たないように現れてくる
間違った頑張りは近視眼に陥る